マーチ・スーパーターボの運転特性など


運転特性
マーチのシリーズではパワー・ステアリングの装着されたモデルがあるが、マーチ・スーパーターボにはパワー・ステアリングはついていないのでステアリングは極めて重い。
純正のステアリング・ホイールは革巻きだが、経年変化で革が破れているものが多い。純正のステアリング・ホイールはずっしりと重量があるので軽量の社外品のステアリングに交換すると操作感が改善される。
小型の前輪駆動車に共通の問題であるが、ペダルはややセンター寄りにオフセットしている。
クラッチはケーブル式で繋がる区間が短いので下手にクラッチを繋ぐと、エンストするか、軽量でパワーがあるので飛びだすように走りだすことになる。

加速
アクセルを踏むと回転は滑らかに上昇し、すぐにかなりの速度になる。
アクセルを踏んでいくと1500回転くらいになったときにカチッと電磁リレーの音がすると同時にダッシュ・ボードにあるブースト・メーターの下の緑色のランプが点灯してスーパー・チャージャーが作動を開始したことが判る。
そのままアクセルを踏み続けるとブースト・メーターが加圧を示しターボ・チャージャーも作動を開始し、さらに加速が始まる。この移行については巧く設計されていてモタつきや不自然な繋がりは感じられない。低回転でもトルクに不足はないが、2000回転くらいから大きなトルクが発生し、3000回転からさらに急激にトルクが上昇し、最大のトルク状態が5000回転くらいまで続く感じがする。5000回転を超えるとややトルクが落ちるように感じるがパワーは衰えないでさらに伸びて行くように感じる。
フル加速時の加速は軽量な車体をグイグイと加速して凄まじい。
余り急激に加速すると、前輪がスリップする前にトルクステアが現れ、車が右側を向こうとするので注意が必要である。つまり、左右のドライブ・シャフトの長さが違うので、両輪に掛かるトルクの違いから片方に持って行かれるのでステアリングをしっかり抑えていないと道路から飛びだしそうになる。
アクセルを踏み込むとあっさりとメーターを振り切る速度まで加速する。レブ・リミッターがあるはずだが、それが作動する前に速度計の針が振り切るのが見えるだろう。
高速での直進性は良好で矢のように走る。一見軽自動車のような形をしたマーチが凄い速度で走るのは信じられないだろう。
全回転数にわたりトルクが十分なので、ひとつ高めのギヤでも十分走行できるし、意識せずに普通より高めのギヤで走行していることが多い。トルクの山の関係で早めにシフト・アップした方が速い場合もある。

コーナーリング
アンダーステアは強く、急なカーブでは車の鼻先が外に出ようとするので、それを抑えこんでステアリングを切り込みながら走行する。クセのあるステアリング特性だが、ねじ伏せてコントロールしているという感じがあって、それもまた快感である。
軽快に加速し、コーナーもキビキビと曲がっていくマーチを運転すると、意のままに操作できる快感に酔いしれる。これほど運転していて楽しい車は珍しい。
キビキビした感覚はパワーこそ違うが、チェリーと共通のフィーリングを感じ、マーチがチェリーの血を引いた子孫であることを強く感じる。
3000回転くらいでパート・スロットルでコーナーに入ると、トルクが急激に上昇し、そのトルク変動のためにコーナーで外側に飛び出しそうになるなど、挙動がおかしくなるのでコーナーを曲がるときには回転数を3000回転より上にするか、下になるように適切なギヤを選ぶべきである。このハイパワーとトルク変動、そして、アンダーの強いステアリング特性のためにこの車を乗りこなすのが難しく、車の高性能に比較してラリーでの良い戦績が出ていないのではないだろうか。

ブレーキ
ブレーキは性能に見合ったもので十分な制動力を示す。ただ純正のパッドは鳴き防止のためにパッドのエッジがローターに斜めに当たるように極端にカットされているためにパッドの接触面積が減少しているので、パッドが新しいうちはブレーキの効きは悪いかも知れない。
パルサーGTI−Rのブレーキを移植するとブレーキが強化されると聞いているので一度試してみたい。パルサーGTI−Rのブレーキ・ディスクは、マーチよりはるかに厚く、放熱性は良好だろうが、ブレーキ・ディスクの直径はマーチよりわずかに大きく、パッドの面積もやや大きいだけだが、それほどブレーキ性能が変化するのだろうか。
ブレーキ性能は多少の向上が期待できる一方バネ下重量を上げることになり、心配ではある。

アフター・ファイアー
平坦路のコーナーの手前で減速し、コーナーに入ってアクセルを少し踏んだ途端に軽いアフター・ファイアーが聞こえることがあるが、これは減速の状態に応じていくつかのシリンダーへの燃料をカットするプログラムがなされているからで、スーパーターボ独特の現象である。

重いステアリング
最初にステアリングは非常に重いと記載したが、パワー・ステアリングがついていなかったころはどの車にしても大体この程度の重さであった。ただし、タイヤのパターンやゴム質によって、ステアリングの重さはかなり変化する。マーチ・スーパーターボで同じメーカーの同じグレードのタイヤで、タイヤのモデル(年式)の変化だけで、劇的にステアリングが軽く変化したことを経験している。
タイヤ幅は175が適切で185にするとステアリクが重くなることを覚悟した方が良い。

戻りの悪い方向指示器
これもマーチの癖であるが、方向指示器のリターンが鈍く、緩やかに曲がると方向指示器が戻らない。
方向指示器のスイッチを入れたままで走ってしまいがちになるので注意が必要である。

ボディ剛性
薄い鉄板で軽量化したボディのためにボディ剛性はやや低く、急な山道を走るとボディの捩じれが判る。ロールバーを入れるとシャキッとした感じになる。また足回りを強化しすぎるとボディに直接振動が伝わりボディの寿命を短くするのではないかという気がする。 その意味では純正のラリー用のサスペンションは固すぎる。

シートとステアリング
純正のシートは形こそバケットシートだがフニャフニャのシートである。多くのスーパーターボではシートの布地が破れたり、タバコの焦げ穴が空いている。レカロなどを付けるとドライビングの感じが一段と向上する。また純正のステアリングの多くは革が破損しており、質量が重いのでナルディやモモに交換すると感じがずっと良くなる。
見てくれの良さから小径のステアリングを好む人も多いが、直径36センチ以下にするとステアリングが非常に重くなり低速時の操作が困難になるし、ステアリングホイールがメーターの視界を遮るという問題を生ずる。多少大きく見えるが、ノンパワーのスーパーターボやマーチRには直径38センチのステアリングが適当であると思う。
ナルディかモモかは好みによるが、ナルディはモモよりやや細身のグリップである。デザインはモモの方が豊富で価格もナルディよりやや安い。ボスは最近は汎用のものが多く、ナルディでもモモでも装着が可能である。

速度警告ブザー
マーチは速度警告ブザーがついているが、うっとうしいのでカットしている。
作業は難しくない。
メーター・カバーの下の両側にある2個のスイッチ(リア・ワイパーと熱線のスイッチ)をこじって取り外し、その裏についているコネクターを外す。
次に、メーターカバーの下端の2本のビスを取り外す。メーターカバーを手前斜め上に引っ張るとカバーが外れる。このときメーターカバーの後ろ側でダッシュボードに引っ掛かっている部分に金属製の爪がついているが、それが紛失しないように注意が必要。
あとはメーターパネルの右後ろに位置にあるブザーの緑色か黄色の端子を固定しているビスを外して端子を取り外せば良い。

水温計
これまで見てきたスーパーターボ/マーチRはいずれも水温が高めの表示を示す。オーバーヒート寸前なのかとびっくりするが、まだオーバーヒートしたことは無い。一度正確な水温を測定してみたいと思っている。
水温計が高い表示を示すのはグリルの形状や補助ランプによって冷却空気が十分入らないという問題があるのかも知れない。補助スイッチを追加して早めに冷却ファンを廻すことができるようにしている人もある。


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