基本的にチェリーは良くできた車で、非常にトラブルが少ない。
主なトラブル個所・メンテナンスのポイント
ラジエーターホースの定期的な交換
サーモスタットとラジエーターキャップの定期的交換
オルターネーターのダイオードの破損
オルターネーターのベアリング
スターターモーターの電磁スイッチの接触不良
ヒュージブルリンクの交換
ファン・ベルトの交換
ウォーター・ポンプの交換
エンジン・サポートの交換
燃料ポンプのダイヤフラムの交換
エンジン・タペット・カバーのガスケットの交換
ヒーターのコックの不良(錆びつきによる固着),水漏れなど
ヒーター・ブロアーのレジスターの焼損
電動ファンのサーモスイッチの不良
サスペンション・ロアーアームの取り付けボルトの磨耗
ドライブ・シャフトのブーツ(アウター側)
ステアリングのラック・ブーツ
ステアリングのラックが磨耗して導通不良となりクラクションが鳴らなくなる
方向指示器のスイッチの接触不良
リア・ウインドウ・デフォッガーの接触不良(ダンパーの接触不良)
ブローバイ・コントール・バルブの破損
高圧コードからのリーク
ボールジョイントのダストカバー
リア・ブレーキの調整
アブソーバーの交換
ブレーキ系のメンテナンス
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壊れそうな部分に注意していれば大きな問題なく現在でも乗ることが可能である。
消耗部分のみ注意が必要である。
ここに記載した内容はチェリーに限らず、当時の多くの車両の取り扱いにも該当する。
当時のゴム質が悪いのかエンジン・ルームの放熱の問題なのかラジエーター・ホース、特にアッパーラジエーターホースは劣化が早いので、定期的に点検して交換する必要がある。布巻きホースなので断面のゴムがひび割れしていたら交換時期である。オーバー・ヒートさせるとヘッドに歪みを生じガスケットの吹き抜けなどのトラブルを起こすので予防が大切である。ロアー・ホースはアッパー・ホースより寿命が長い。
特に冬季にウォーミングアップが遅くなり、ヒーターの効きが悪くなるので、サーモスタットの不良が判明する。サーモスタットのハウジングを外して簡単に交換が出来る。振り子弁つきのサーモスタット(21200-A3001)を装着するとウォームアップが早い。
サーモスタットは標準仕様が82.0±1.5度、寒冷地仕様が88.0±1.5度、熱地仕様が76.5±1.5度で開弁する。サーモスタットの異常時にはラジエーターキャップも点検する。ゴムーシールが破損して十分圧力が掛からないためにオーバーヒートにつながったり、冷却水がラジエーターキャップから漏れることもある。
オルターネーターは日立製と三菱製の2種があるが日立製のオルターネーターについてはダイオードユニットが破損することが多い。
3層の放熱板にダイオードが取り付けてあるが、発熱のためにダイオードが剥がれたり、一部のダイオードが破損する。
ダイオードユニットが入手できればオルターネーターのカバーを外してダイオードユニットのみを交換できる。工具はレンチとハンダコテのみで可能である。
三菱製のオルターネーターはめったに故障しないが、不思議なことに三菱製のオルターネーターが装着されているチェリーは珍しい。なお、オルターネーターとレギュレーターは同じメーカーのものを使用し、混用しないこと。
現在も実用的にチェリーに乗るならレギュレーター内蔵型の最近のオルターネーターに交換した方が良いだろう。
オルターネーターの異音はベアリングの劣化が原因である。汎用のベアリングが簡単に入手できるので、自動車パーツ店や、機械店で購入する。
日立製のオルターネーターの場合、プーリー側のベアリングは6202、反対側のベアリングは6201である。ベアリングにはシールタイプと開放タイプがあるが、シールタイプを購入する。小型のプーラーと普通の工具があれば交換は容易である。
バッテリーに異常が無く、十分電気があるはずなのにカチッと音がしてそのままスターターモーターが回転しない場合はほとんどこのリレーの接点の損傷、またはプランジャーの作動不良である。
チェリーの場合はスターター・モーターがエンジンの前側の下の方についているのでソケットレンチで取り外しが可能である。ナットが回り止めのために特殊な形状になっている。取り外しよりも取り付け時に苦労することが多い。スターター・モーターの横についているプランジャーリレーを分解して接点を研磨する。可動部にはグリースなどを塗布しておく。ブラシの磨耗状況も調べておく。
負荷が掛かった状態で快調に走行していると突然電気系統が切れてしまう場合がある。これはヒュージブルリンクのトラブルである。
ヒュージブルリンクは両端が平型端子になったヒューズの一種で、チェリーの前期モデルにはメインが1本とヘッドライト用が2本ある。後期のモデルはメインのヒュージブル・リンクのみで、ライトの回路にヒュージブル・リンクは無い。
溶断している場合は目視、または指先の感覚で判るが不明の場合はテスターで確認する。使用回路 被覆色別 サイズ 構成 1mあたりの抵抗 連続通電可能電流 ヘッド・ランプ 緑 0.50平方ミリ 線径0.32×7本 0.0325オーム 20A 電源回路 赤 0.85平方ミリ 線径0.31×11本 0.0205オーム 26A
ファン・ベルトは消耗品であり、定期的に交換する。ベルトの内側にヒビ割れが発見されたら交換しなければならない。ベルトの表面は異常が無いように見えても劣化している場合が多いので要注意である。
ベルトはオルターネーターの下の取り付けボルトと上の調整ボルトを緩めて交換/調整する。ベルトを交換した場合の張り具合には十分注意する。張り過ぎるとベアリングを痛め易いし、張りが緩いと充電不足やスリップ異音の原因になる。ベルトの中央を押して10ミリ程度のたわみがあるように調整する。ベルトは初期に伸びがあるのでベルトを交換した場合は1000キロ程度走行後に張りを調整する。
ウォーターポンプはシールの部分が劣化してきて水漏れを生じたり、異常な音、キーキーとか高い音がしはじめて徐々にゴロゴロ音に変化してくる。だんだんとひくい音に変化してくるとトラブルの寸前である。ウォーターポンプの交換は冷却水を抜き、ベルトを外せば簡単に交換できる。
エンジンはサブフレームの前で2箇所、後部1箇所で固定され、上部の左右にエンジンの揺れを止めるバッファーロッドがある。エンジン下のラバーマウントは比較的丈夫だが、バッファーロッドのラバーマウントは劣化しやすいので定期的に交換する。
燃料ポンプは機械式で、ダイヤフラムの破損によって燃料を送り込まなくなることがある。ダイヤフラムや弁の交換で直るが、最近は燃料ポンプのアッセンブリーでしか部品が入手できない。なお、燃料フィルター(フューエル・ストレーナー)は定期的に交換する。燃料フィルターの詰まりのために燃料ポンプが十分燃料を吸い込まないこともある。
A型エンジンのタペットカバーは鉄板をプレスしただけのもので取り付けネジを締めすぎたりするとその部分だけが歪み、オイル漏れの原因となる。エンジン・タペット・カバーのガスケットはコルク製であり、ヘタッてきて厚みが減ってくるとオイルが漏れるので定期的に交換する。
ヒーターの温度調節はヒーター用のコアの横についているコックを回して行うが、このコックを使用しないと固着する。夏季の間閉め切ったままにしておくとその状態で固着する。無理に回すとコックの根元から折れるので注意が必要。ヒーターのシーズンでなくてもときどき回して固着しないようにする。
ヒーターのブロアー(ファン)はハイとローの2段階であり、ローの方は単に抵抗を通して電流を制御しているにすぎない。この抵抗はニクロム線で出来ており、ヒーター内部のブロアーの近くにある。この抵抗が発熱して焼損し、配線を溶かしたりしてブロアーの回転が不調になることもある。
水温がある程度以上上昇すると温度(90-95度)を感知して電動ファンが回転し、87度付近で電動ファンがオフになるようになっている。まれにこのスイッチがオンにならないために電動ファンが回転せずオーバーヒート気味になることもある。この場合は応急的にサーモスイッチ(ロアーホースの中間についている)から出ているギボシ端子で短絡させ、電動ファンを回す。
リアのロアーアームの前方はラバーブッシュが圧入されており、ボルトで車体側のブラケットに固定されている。このボルトが擦れて細くなっているケースが多いのでボルトの定期的な交換が必要である。
チェリーに限らないがFF車のドライブ・シャフトのブーツ、特にアウター側(ホイール側)はハンドルを切ったときに負担になるので破れやすい。グリースが散るので異常がわかるが、日常の点検を怠らないこと。ホイール側のベアリングはバーフィールド型であるのでベアリングを分解してブーツを交換することになる。ドライブ・シャフトは非常に堅牢であり、ベアリングの異常はほとんど無い。
ステアリングのラック・ブーツは結構寿命が長いが20年も経過すると交換が必要になる。タイロッド・エンドを取り外す必要があるので、分解前に左右のタイロッドの長さを測定したりマークして組み立て時に同じ位置にくるようにする。組み立て後にトーインを調べる。トーインはタイヤの真中にマークしておき、その位置が車の前にあるときの両輪の間隔を測定し、左右のタイヤを180度回転してマークした位置が車の後ろにきたときの両輪の間隔を測定する。チェリーはトーインが5ないし7ミリということになっているが、ラジアルタイヤを装着する現在ではトーインはゼロ調整が良い。
長期使用するうちにステアリングのラックギヤとピニオンギヤのギャップが広がり、電気的な接触不良が生ずる。クラクションの回路はアースすることによってホーンリレーを作動するようになっているが、ステアリング・ラックの磨耗では修理が困難であり、長めのレバースイッチをダッシュボードに追加してホーンスイッチとして対処している。
これも旧車の宿命だが、長年使用したために接点が腐食/磨耗して、接点の接触抵抗が増える。その結果方向指示器の点滅速度が異常に遅くなる。
スイッチを分解して接点を研磨して直る場合もあるが、多くの場合スイッチの交換が必要である。
チェリー・クーペの場合リアのウインドウの熱線に電気が流れないことがある。熱線には両側のダンパーから電気が供給されており、リア・ゲートを閉じたときにダンパーから熱線に電気が通じるようになっている。この部分の調整が悪いと電気が流れない。簡単な仕組みであるが、トラブルの多い個所である。
エンジンのブローバイガスをタペットカバーより吸い出してインレットマニホールドに入る部分についているバルブであり、これが破損すると負圧大きくなり、オイルの混じった多量のブローバイガスを吸い込む結果、エンジンの調子は悪くなるし、白煙を出す結果になる。定期的に点検/交換が必要。
点火コイルの位置からディストリビューターまでの距離の問題があり、高圧ケーブルが金属部分に接触してリークするというトラブルも多い。純正品ではなく,社外品のしっかりした高圧ケーブルに交換しておくと良い。リークの有無は夜間にエンジンをかけた状態で暗い場所に止めて、ボンネットを開けるとリークした場所がわかりやすい。もっとも負荷のかかった状態でリークしやすいのでこの方法で発見できないこともある。
なお、点火系はポイントの定期的な交換などの面倒な作業を避け、また、より強い火花を発生させるために社外品の無接点式のフルトランジスター式の点火コイルに交換しておくと良い。日立製のフルトランジスター式点火コイルが入手しやすいし、トラブルが少ない。
タイロッド・エンドのボール・ジョイントのダスト・カバー(ラバー・ブーツ)は車検毎くらいに溶けたように傷むことが多い。ダスト・カバーの交換のためには工具としてタイロッド・エンド・プーラーが必要だがこれさえあれば簡単に交換できる。
当時はブレーキの調整は自動ではなかったので、定期的に調整が必要である。タイヤを外した方が調整しやすい。ドライバー1本で調整できる。シューを拡げて、アジャスト・ナットを回転させてブレーキ・ドラムが回転しない状態から数コマ緩めて、左右のブレーキ・ドラムが同じような手ごたえで回転するように調整する。
チェリーX−1用の純正のフロント・ストラット・アッシーは54303-M0226で、X−1R用は54303-M0225で、いずれもカヤバ製で、10年ほど前は単価が19300円であった。以前はオーバーホールキットと言ってストラットの内部のバルブ(弁)やオイルシール、ストラット・オイルなどのキットがあったが、もはやそのようなパーツは無いだろう。
社外品としてカートリッジのみが発売されていたと記憶しているので、ストラットを分解してそのようなパーツを組み込むのが良い。一旦ストラットを分解するとオーバーホールキットが無い限り復元するのは難しく、社外品のカートリッジの装着を続けることになる。
リアはガス入りのアブソーバーで、ガスが抜けているものが多い。今でもパーツが入手できるのか不明である。軽自動車のアブソーバーのなかに転用できるものがあるかも知れない。
ブレーキ系では当然の定期的な交換パーツであるマスター・シリンダーのカップ・キットやリア・ブレーキのホイール・シリンダーのピストン・カップの交換をする。ディスク・ブレーキのピストン・シールの交換はそれほど難しい作業ではない。リアのブレーキ・シューは磨耗が偏ったりするので交換頻度は高い。フロント・ディスク・パッドは意外と減らないが、ディスク・ブレーキ・ローターの表面が凹凸になるので研磨が必要になる。フロント・ディスク・パッドはダイハツのコンソルテやシャレードのものと共通である。ブレーキ・ホースも何年か毎に交換が必要。
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