チェリー(E10),チェリー・クーペ(KPE10)のメカニズム


A型エンジンはオーバー・スクエアのOHVでスムースに高回転まで回り、耐久性も良好な名エンジンであった。
1000ccのエンジンは3メタル、1200ccのエンジンは5メタルである。


基本的にサニーと同じエンジンだが、エンジンの直下にミッションを置くために、オイルパンの形状がユニークである。


つまり、左側に深いオイルパンがあり、ミッションの装着される部分のオイルパンは非常に浅く作られている。
オイル・パンはアルミ・ダイキャスト製で冷却用のフィンもつけられており冷却性能も優れていた。


画像はエンジンの後方から見たものであるが、左下にアルミのオイルパンが見える。
エキゾースト・パイプはエンジンとバルクヘッドの間から下に下りてボディーの下から後ろに繋がっている。
色々な部分でミニを参考にしたのか類似の部分があるが、チェリーは各部分を改良している。ミニはエンジンとミッションを共通の潤滑回路としており、同じオイルで潤滑させているが、チェリーは上述のメカニズムでそれぞれ独立した潤滑系としている。

次の画像はエンジンを左側から見た様子である。


次の画像はエンジンを右側から見た様子で、クラッチのレリーズ・レバーが見える。


動力はダイヤフラム型のクラッチを経て接続され、3枚のヘリカル・ギヤで構成されるプライマリー・ギヤ・パワー・トレインを通じてミッションにつながれている。
プライマリー・ギヤ・パワー・トレインの発する独特の音がチェリーの味わいをだしており、チェリーが走っている音だと聞き分けることが可能である。
エンジンとトランス・ミッションは四角型のサブ・フレームを介してボディに取り付けられている。


初期のチェリーはミニと同様にラジエーターがエンジン・ルームの左側にあり、ウォーターポンプと同軸で駆動されるファンによって熱気を左のタイヤ・ハウスに逃していたが、その後ラジエーターは正面に移動され、電動ファンが設置された。エンジンルームの左側のタイヤハウスには冷却ファンと同じ直径のプレスがその名残として残っている。

クラッチはワイヤーレリーズで、特殊なスラストベアリングを介してプッシュ・ロッドを押し、プレッシャー・プレートを押す方式である。


クラッチ・スプングは1個のドーナツ型のダイヤフラム・スプリングである。このメカニズムのせいかクラッチの繋がりは唐突であり、半クラッチの範囲は狭く、慣れないとクラッチ操作が難しい。
チェリーはそのユニークな設計のためにエンジンとミッションを搭載したままの状態でクラッチの交換が可能である。
クラッチの交換は、まず、右フロントタイヤを外し、タイヤ・ハウス内のメクラ蓋の3本のビスを取り外し、蓋を外す。
クラッチ・レバーのゴム・ブーツを外し、ピンを外してからベアリング・カバーの6本の10ミリのボルトを外す。ついで、ベアリング・カバー本体を抜き取るとギアとともに取り外すことができる。クラッチ・ハウジングのカバーを外し、フライホイールを回しながらクラッチ・カバー締め付けボルトを均等に緩めていく。この状態でクラッチ・カバー,クラッチ・ディスク,プレッシャー・プレート,ダイヤフラム・スプリングを取り外すことができる。クラッチ交換は素人がやっても1時間程度で終えることができる。しかもジャッキとレンチ程度の工具のみで作業が可能である。(最近この特殊なスラストベアリングベアリングが欠品だと聞いている。チェリーF2の部品が流用できるかも知れない)

ミッションはディファレンシャルと一体化されており、潤滑も同じオイルで行う。ディファレンシャル・ギヤもヘリカル・ギヤが使われているためにハイポイド・ギヤのような歯当たりの調整は不要である。
シフト・レバーがグラグラになりフィーリングが悪い場合にはシフト・リンケージに使われているプラスチックのカラーが磨耗していることが多く、このパーツを交換すると良い。
バック・ライトスイッチからのオイル漏れもしばしば見られる。

ドライブシャフトは完全等速のジョイントが使用されており、デフ側はダブル・オフセット型、ホイール側はバーフィールド型を使用している。ブーツの交換はバーフィールド型のジョイントを分解して行う。ダブル・オフセット型ジョイントは分解できない。


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