点火ポイントの調整方法(コンタクト・ポイント、コンタクト・ブレーカー)


旧車をオリジナルのまま乗っていると、エンジンの調子が悪くなったり、エンジンの始動が出来なくなって、ポイントの調整は必須な作業になる。
最近の車には点火ポイント(点火用火花接点)が装着されていないためにポイントの調整ができる整備士も少なくなっている。最近ではオートバイ屋さんの方がポイントについては詳しいので、ポイントの調子が悪い場合には大型オートバイを扱っている店に行くと良い。

調子の良いポイントの状態は次の通りであり、この状態のときに強力な火花が供給されエンジンの調子が良くなる。
@接点が焼損していないこと。
A接点が正しく接触していること。
B接点のギャップ(接点の間隔)が適正であること。
C正しい点火タイミングにすること。

ポイントを交換したり、ギャップを調整したりすると、点火タイミングが狂うので、必ず点火タイミングを再調整すること。

ポイントセットは二つのパーツから成り立っている。
ひとつは基台に接点があり、もうひとつはアームに接点がついている。
アームのシャフトは基台についていることが多いが、車によってはディストリビューターの本体にアームのシャフトがついているものがある。

ポイントのトラブルは大きくわけて次の通りである。
@接点が焼けており、接点の金属が溶けたりして接点の接触が悪くなっているもの。
A接点が正しく接触していないもの。@の原因と共通するが、金属が溶けたりした結果、接点の端で接触したりしているケース。
Bアームのヒール(ベークライト製の突起でディストリビューターの中心のカムと接触している部分)が磨耗して接点のギャップが狭くなっている場合。

他にポイントそのもののトラブルではないが、コンデンサーの不良(容量低下)の場合もあるので、ときどき予備のコンデンサーと交換すると良い。

ボイントの交換方法
最初にクランクプーリーの切り欠きをエンジンブロック側についている圧縮上死点前のタイミング(点火位置の)マークに合わせる。
クランクプーリーの真ん中にレンチをかけて回すか、エンジンが掛からないように点火コイルから高圧ケーブルを抜いた状態でセルモーターをチョンチョンと回して点火マークに近くになったら手でファンベルトごとプーリーを回して上死点前の点火位置のマークに合わせると良い。

ディストリビューターキャップを外す。ローターを外し、車によってはダストカバーを外す。
ポイントの接点を視覚的に観察してギャップの狭さの程度と接点の焼け具合を調べる。
このときにアームのヒール部分のベークライトが磨耗して減っていないか点検する。
この観察によって点火系の不調の原因が、どこにあるのかだいたい見当がつく。
ポイントを固定しているビス2本を緩める。ディストリビューターの横からポイントの板バネにつながっているケーブルとコンデンサーのケーブルを共締めしている端子のナットを緩める。コンデンサーはディストリビューターの内部に装着されている車と、ディストリビューターの外側に装着されている車がある。
ポイントアームから出ている板バネ側のケーブルを端子から外しポイントセットを取り外す。
ここで接点の焼け具合とヒールの磨耗の状態を再度目視で確認する。

接点の中心が灰白色にわずかに焼けているのが正常で、黒く焦げていたりするのはギャップが狭い場合で、接点のセンターからずれた位置が焼けているのは接点の当たり面が狂っていた証拠である。
接点の当たり方が悪い場合、接点のセンターそのものが狂っている場合と、接点同士が斜めに当たっている場合がある。
接点はセンターが一致し、しかも接点面が平行にピタリと合わなければならない。接点の当たりが悪い場合は基台をプライヤーなどでわずかに曲げて修正する。

古い接点の真ん中に多少の凸凹があるのは正常であるが、大きな凸と凹みが出来ている場合はコンデンサーが不良である。
アーム側の接点に凸があり、アース側の接点に凹みがある場合は、コンデンサーの容量不足で、逆の場合はコンデンサーの容量が過大である。コンデンサーはポイントが開いた瞬間に電気を蓄え、ポイントがつながったときに放電する作用があり重要な役割を果たしている。

ポイントの修正はオイルストーンや細かいサンドペーパーで接点を磨く。耐水ペーバーの番手の細かいものを二つ折りにしてポイントの間に挟み、両側の接点を同時に磨くと良いが、巧く修正するには経験が必要である。
安価なパーツなのでポイントを新品に交換した方が良い。

画像は上がトヨタ用、下が三菱・マツダ用である。


新しいポイントの取り付けにあたってはアームの板バネにつながるケーブルを締め付けて固定するのを忘れないようにする。
ポイントの基台を固定するビス2本を軽く締める。
その状態で接点のセンターが合っていて、平行にピタリと接点が閉じるか調べる。
トヨタ車などポイントの基台に 調整用の切り欠きがある場合は、マイナスドライバーを切り欠きに引っ掛けて回してポイントのギャップを調整する。
ポイントの基台に長円(楕円) の調整穴が空いている場合は、その穴の中のビスをドライバーで回してポイントのギャップを調整する。

車によるが、ポイントのギャップは通常0.4から0.5ミリであり、シックネスゲージを接点の間に挟んで調整する。シックネスゲージはオイルなどで汚れていないことを事前に確認しておく。ポイントがオイルなどで汚れると不調の原因になるからである。
ポイントのアームのヒールの位置にディストリビューターの中心のカムの山が当たっていることを確認する。
ヒールとカムの間にほんのわずかにグリースを塗っておく。そのためにカムの真ん中の穴にグリースが入れてあることが多い。
グリースはつけすぎると飛散してポイントに付着してエンジン不調の原因になるのでわずかな量に留めるのがコツである。要するにポイントのアームのヒールの磨耗が防止できれば良いので、極少量のグリースをカムの回転する方向のヒールの基部に塗ればよい。

ボイントのギャップが狭すぎる場合は、電流が流れている時間が長くなり、しかもポイントが開いてもスパークが持続するためにポイントの焼損が早くなり、アイドリングが不調になり、さらにエンジンが始動しなくなる。逆にギャップが広すぎると、点火コイルに行く一次電流が不十分になり、結果的に火花が弱くなり、高速時に失火する。
本当はポイントのギャップよりも、ポイントの断続時間が重要である。ディストリビュターのカムアングルまたはドエル角が適正であることでもっとも好ましいスパークの状態を得ることが出来る。ドエル角を直接調整できないので、ポイントのギャップを調整することで、間接的にドエル角、つまりポイントの断続時間を適正に保つようにしている。いろいろな複雑な要素により、ポイントのギャップを適正値にしてもドエル角が適正値でないこともある。言い換えると、車の個体によってはギャップの値が規定値より多少ズレていた方が調子の良い場合もある。
ポイントの断続時間は厳密にはドエル角テスターで調べないと判らない。
新品のポイントセットを装着して、規定のポイントギャップにすると、適正なポイントの断続時間(ドエル角)に近くなると考えて良い。

ギャップの調整が出来たら、ポイントの基台を固定するビス2本を緩まぬように締め付ける。

エンジンを始動し、タイミングライトを使用して点火時期が規定の点火位置になっているか調べ、狂っていればディストリビーターを固定しているボルトを緩め、ディストリビューターを少し回して点火時期を調整する。タイミングライトのセンサーは1番シリンダーの高圧ケーブルを挟む(タイミングライトによっては繋ぐ)こと。
点火タイミングについてはエンジンにより規定値が異なるので、規定値にすること。ちなみにA12型エンジンの場合上死点前8度である。

タイミングライトが無いときのウラ技をいくつか紹介しておく。
テスターかテストランプを使用する方法。
クランクシャフトを回してクランクプーリーの切り欠きをエンジンブロック側についている圧縮上死点前の点火マークに合わせる。
ポイントの両側の接点に豆電球、またはテスターを電圧計の状態にして繋ぎ、ディストリビーターを固定しているボルトを緩める。イグニッションスイッチを入れたまま(セルモーターは回さない)の状態で、ディストリビューターをアームのシャフトから接点の方向に少し回すと、ランプが消灯(テスターの電圧ゼロ)の位置になる。そこからディストリビューターを逆に接点からアームのシャフトの方向に少しずつ戻していくと、ランプが点灯(テスターに電圧が出る)する瞬間にデストリビューターを動かすのをやめてその位置で固定する。
もうひとつの方法は点火コイルからディトリビューターにつながっている高圧ケーブルをディトリビューターの真ん中から引き抜き、エンジンブロックから数ミリ離した位置にしておき、テスターかランプを使用してタイミングを合わせる方法と同様にしてからディストリビューターを回していく。高圧ケーブルとエンジンブロックの間で火花が発生した瞬間にデストリビューターを動かすのをやめてその位置で固定する。
他に試走して合わせる方法もある。平坦な道路でトップで30から40キロくらいで走行し、急にアクセルを踏んで加速した場合にわずかにカリカリとノック音が聞こえるなら適当なタイミングである。ノック音が聞こえない場合はタイミングが遅い。いつまでもノック音がするのはタイミングが早すぎる。ディストリビューターの根元の固定ボルトを緩め、目盛りをひとコマずつずらしながら試走し、一番調子の良いところを探す。

このようにボイントのメンテナンスは面倒なので、できればフルトランジスター方式の点火装置に交換する方が良い。
ポイントの代わりに、センサー(ピックアップ)を装着する。センサーの方式としては、磁気によるものと、発光ダイオードによるものがある。ポイントをそのまま残して、ポイントからシグナルを取ってトランジスター点火装置を作動させるセミトランジスター方式もあるが接点の焼損はさけられるものの、アームのヒールの磨耗の問題は残るので、できればメンテナンスフリーのフルトランジスター方式にしたいものだが、通常はセミトランジスター方式で十分な効果が得られる。
セミトランジスター方式の点火装置は永井電子から販売されている。
以前は磁気式のピックアップ(センサー)とセットになったフルトランジスター変換キットが日立から、光学式のピックアップのものがLUMENTIONルーメニションから発売されていた。
インターネットで調べるとLUMENTIONからNewtronic Contactless Electronic Ignition Systemとして国産車をはじめ各種の車種用のものを今でも販売しているので、次のサイトから問い合わせると良い。 http://www.lumenition.com/newtronic/system/index.html
最近のLUMENTIONの点火装置は磁気式のピックアップになっているようである。

ポイントの調整については最近は参考資料が少ないが、下記の出版物が参考になる。
OLD-TIMER  Special Issue 旧型自動車整備要綱 八重出版  平成19年4月26日発行 1500円+税 ISBN978-4-86144-064-9


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