ラリー用時計と計算機について
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ラリーに使用された時計と計算機について記録しておきたい。


ラリー用の計算機
電卓もない時代で当然ラリー・コンピューターなどは無く、最初はタイガーなどの機械式の手回し計算機を使用し、
分速を入力して1分経過するごとにハンドルを1回転させ、積算した距離と実際にトリップ・メーターが示す数値の
違いから早遅を判断してドライバーに伝えていた。

機械式の計算機は相当大型で重かったが、その後パイロットから小型の機械式計算機が発売されて、ほとんどの車が
パイロット計算機を装着した。ごく一部にクルタというリヒテンシュタイン製の小型の機械式計算機を使用していた。
クルタは筒型でマグカップよりやや小さい形で手持ちで使用した。なお、クルタは機械式では世界最小の計算機で、
その精緻な構造はカメラのライカなどおよびもつかないほどである。

当初はナビゲーターは時計を見ながら、時刻が1分経過するごとに機械式計算機のハンドルを1回して1分後の距離を
計算してその距離のズレを「○○メートル遅れ」とか、「□□メートル先行」とドライバーに伝えていたが、のちには、
大西氏が開発したといわれているが、距離単位の所要時間、つまり、100トーメルごと、あるいは200メートル毎
などの距離を走るたびに時間を計算してそのズレを「○分遅れ」とか「□秒先行」と、ドライバーに伝えるようになった。
つまり、ラリコンと同じロジックで時間の誤差を見るようになった。
なお、当時は大西式タイムテーブルというのが4500円で販売されていた。

指示速度の設定が高過ぎて、計算をいくら正確にやってもオン・タイムで走行できないラリーもあり、正確に
計算することよりも簡易的に計算する人もあり、ヘンミ計算尺が使われることもあった。
計算尺は目盛りが細かく、ナイト・ラリーでは使用が困難で、ラリー用に開発された計算板というのが使用された。
仕組みは計算尺と同じで、対数目盛りによって乗除算をするものである。
有名な製品としてはStevensのラリー計算板がある。
国産ではインディカトーおよび他の店から類似の計算板が販売されていた。これは対数目盛りがつけてあり、
指示速度を合わせて2本の針(カーソル) を固定すると、任意の時間に対する距離、あるいは距離に対応する時間が
算出できた。分計測のラリーなら十分戦える道具だった。

ラリー用の時計
ラリー用の時計として正確なものが求められたが、機械式の時計が主流であった。スイスのホイヤーや
ブライトリングなどが航空機用の時計を作っており、頑丈で正確だったが、とても手の届く金額ではなかった。
多くのラリーストは鉄道時計と呼ばれる頑丈な懐中時計をメインにし、ラジオの時報で調整をして使用した。
見やすいということでバスの大きな時計をダッシュボードに取り付けているチームもあった。
航空機用の時計も正確で頑丈であることから好まれたが入手が困難であった。主催者も正確な時計が無いために
秒切捨ての分計測が普通だった。
時計はその後ジェコーから音叉時計が開発され、正確度が高まった。この時計はトヨタ車に多くされたので純正部品を
入手して車体に取り付けて使用することが流行った。照明もついており、ナイト・ラリーに重宝した。
音叉時計は気温の変動による誤差を生ずるので、音叉時計よりさらに精度の高い水晶発振子を使用したクォ−ツ式の
時計が普及するようになって今に至っている。

型式
メーカー
画像特徴サイズ
重量

機械式(手回し)計算機
タイガー
レバーで数字を入力し、ハンドルを正回転させることで入力した数字を加算(逆回転では減算)していく方式の計算機で、同じ桁なら正回転した数だけ加算したことになり、ひとつ上の桁にずらして、ハンドルを回すと、10の位で加算したことになる構造の計算機で、乗除算に使用された。
割り算も出来たし、複雑な操作も必要だが平方根を求める方法も可能であった。タイガーの製品が有名だったのでタイガー計算機と総称されるが、他の事務機器メーカーも類似の機械式計算機を作っていた。
 
 
佐賀のK氏のご好意により寄付
小型計算機
パイロット

万年筆などを作っているパイロットが作った小型の機械式計算機で、ラリーコンピュターが開発されるまでは日本のラリー車の99%がパイロット計算機を使っていたと言って過言ではない。
パイロット計算機は斜めにハンドルが出ていて操作しやすかった。
年式によりいくつかのモデルがある。後期モデル(下の画像)は流線型になったが、ラリー車には初期の四角のボディ(上の画像)が似合う。
   
   
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小型計算機
クルタ
クルタというリヒテンシュタイン製の小型の計算機は機械式では世界最小の計算機で、その精緻な構造はカメラのライカなどおよびもつかないほどである。
   
    
佐賀のK氏のご好意により寄贈
STEVENS計算板
STEVENS
円盤に対数目盛りがつけてあり、指示速度を合わせて2本の針(カーソル) を固定すると、任意の時間に対する距離、あるいは距離に対応する時間が算出できる。
分計測のラリーなら十分戦える道具である。
7600円。
アメリカ製
   
   
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ラリーメイト
円盤に対数目盛りがつけてあり、指示速度を合わせて2本の針(カーソル) を固定すると、任意の時間に対する距離、あるいは距離に対応する時間が算出できる。
アメリカ製のSTEVENSを改良して使い易くしてある。
ラリーメイトUは±10%までの補正に対応し、ラリーメイトDXは±25%までの補正が可能になり、板の厚さも厚くなった改良版である。
インディ・カトーなどから販売されていた。
8800円
   
    
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鉄道時計
鉄道で広く使用されてきた秒針付時計がラリーでも使用された。当時は機械式だったが、現在でもセイコーからクォーツ式となって販売されている。
精度:平均月差±15秒で、強化耐磁、電池寿命は約10年と長持ちする。
型式SVBR001 定価21,000 円
重さ 86g
厚み 13.4mm
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ラリー用時計
ジェコー

音叉の共振周波数が一定であることを利用して作られたのが音叉時計で、ジェコー製の音叉時計がトヨタ純正品として採用されたので、当初はクラウンの音叉時計をラリーに流用するのが流行った。
ジェコーが後にクォーツ(水晶発振)式ラリー用のモデルとして市販した。
ラリー用のモデルは、秒針のみがアナログ表示で、時分の表示はデジタル式になっている。
時刻を読み取り、誤差を確認する視認性を上げるために大型の文字盤になっている。
秒針は連続で動く。つまり秒針がカチカチと動くのではなくモーターのように針が動く。
右側のノブを引くと秒針を止めることができ、回すと文字盤の周りのベゼルが回転するようになっている。左のノブは時間と分を合わせるためのノブである。
下の画像のように回転ベゼルがついていないモデルもあった。
直径が大きいだけでなく、奥行きも10センチ以上あり、車輌への装着には工夫が必要だった。
直径150ミリ、奥行115ミリ、重量1060グラム所有
ラリー・マスター
HEUER
ホイヤー
スイスのクロノグラフの名門ホイヤーがラリー用のコックピット用クロノグラフとして作ったのがマスター・タイムとモンテカルロで夜光の文字盤を持ち頑丈に作られている。
時計とストップウォッチを二連で装着したラリー・マスターとして装着することが多い。
左側がマスター・タイムという8日巻きの時計で、右側がモンテカルロというストップ・ウォッチで経過時間が窓に数字で表示される。
通常このように2個セット用のベース・プレートに装着して使用されたが、プレートを交換すれば1個ずつでも使用できた。
日本での価格は非常に高かったので、この品は昔、香港で入手したものである。

所有
航空機用時計
ロシア製ミグ用
航空機用の時計は堅牢であったが、入手が困難であった。
画像の品はロシアのミグ戦闘機用のもので、7日巻きで、ストップウォッチが2個ついている。
時計のネジを巻く方向が反時計方向で普通とは逆なのに戸惑う。
照明用の電源が27Vという半端な値なのもロシアならではの規格だ。この時計は原宿のフリーマーケットでロシア人から直接購入した品である。
直径85×奥行70ミリ
  
所有
ラリー用時計
トスコ製
ラリー用のクォーツ(水晶発振)式デジタル時計がトスコTOSCO(現TRD)から発売された。
実際の製造はJECOである。
標準時刻とストップウォッチの二連式。
54000円。

 
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MTB-3000
ミツバ製
ラリーデジタル・クォーツ。詳細不明。
38000円。
   
   
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DRC-1000
標準時刻とストップウォッチの二連式。カドニカ電池内臓でバックアップをしている。
55000円。
   
   
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JIM-QUARTZ MKU
標準時計またはストップウォッチとして使用できる。ストップウォッチとして使うにはスタートとストップの押しボタンのストロークが大きく、厳密な測定には適さない。
〒115-0045 東京都北区赤羽2−65−7 ラジオシャックビル2F
株式会社ジムクォーツ TEL 03-3903-3988  FAX 03-3903-3919
幅83ミリ、高さ56ミリ、奥行き32ミリ、95グラム
所有
ネギシ・ラリー・クォーツ
標準時刻を6桁表示する。
19800円。
   
   
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グリーンクス・クォーツ SU-7
オールリセット機能付の標準時計。表示がグリーンで見やすい。
8800円。
   
   
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オフィシャル用GPSクロック model ST-100 VER2.3
GPS信号から時刻データを得ているのでマイクロセコンドの単位の精度で非常に正確な時刻を表示する。画像で左の窓は17時を示し、右の6桁の表示で分以下を表示する。右側のスイッチは手動スプリットで時刻をホールドし、左側のスイッチでホールドを解除する。GPS信号受信部は航空用20チャンネルパラレルレシーバーで室内で実用になるほどの高感度である。他の機器と同期させて正確な計時が可能。充電式の内臓電池で駆動する。オプションの光電管と接続して自動測定が可能で、タイムデータは自動的にPCに入力できる。オプションでスタートシグナル付き大型表示ボードがある。
〒115-0045 東京都北区赤羽2−65−7 ラジオシャックビル2F
株式会社ジムクォーツ TEL 03-3903-3988  FAX 03-3903-3919
  
縦170ミリ×横250ミリ×奥行き110ミリ
価格 税込99750円
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オフィシャル用スタートシグナル付き大型表示ボード
オフィシャル用GPSクロック model ST-100 VER2.Sに接続して使用するオプションのスタートシグナル付き大型表示ボード。フライングセンサー付きスタートシグナルは毎正分5秒前より電子音と共に1個づつ点灯して、00秒で全消灯となる。スタートラインに光電管をセットすると、フライングを検知してパトライトが回転する仕組みになっている。超高輝度LEDを使用し、照度は無段階で調整できる。
〒115-0045 東京都北区赤羽2−65−7 ラジオシャックビル2F
株式会社ジムクォーツ TEL 03-3903-3988  FAX 03-3903-3919
  
使用時600X600ミリ、奥行き70ミリ 重量約7キロ
価格 税込120750円
譲ってください

ラリーと時計に関しては(株)セイコーサービス代表の本間誠二氏http://www.hommawatch.com/がもっとも詳しい。
本間誠二氏は日本ダットサン・クラブ東京の会長を務め、さらにツール・ド・ニッポンなどのラリー競技の主催に携わり、自動車やラリーに対する造詣が深く、しかも機械式時計に関して日本最高の技術者と言ってよい。
昔、日本アルペンラリー出場前にいろいろと的確なアドバイスをいただいたことが記憶に鮮やかである。

ホイヤーのラリーマスターについてはこのページhttp://www.lancia-hf.com/pages/tools_other/rally_master.htmlが詳しい。


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