”N”さんのマーチ・スーパーターボ (改造の参考に)


●バージョン1

京都在住のNさんの専門は車や電気と全く関係が無いが、マーチスーパーターボに情熱を注ぎ、
いろいろな改造を加えた。
外観で見るとエアースクープが無いので普通のマーチかと思わせるが、実際は大型のインタークーラーを
パンパーの裏に巧く嵌め込み、前面からインタークーラーに直接外気があたり冷却されるようになっている。


エンジン・ルームを見ると巧妙にパイプが配置され、インタークーラーとフローメーターやターボと繋がっている。




さらに凄いのはメーターパネルを自作してあることで、カーボンファイバーのパネルにデジタルメーターや
警報のLEDを組み込んであることだ。
スーパーターボはスピードセンサーのシグナルを速度計から取っているので、単にスピードメーターを取り外すと
走らなくなるが、スピードセンサーの機能は残して標準の速度計の代わりにデジタルメーターを装着している。
見た感じの外観の仕上げの程度も良いが、実際内部の配線なども非常に綺麗に仕上げられている。
HIDも装着されているが、その配線作業の仕上げの美しさは素晴らしい。
改造車の場合は作業が雑になされているものが多いが、非常にきちんとした作業がなされており模範的な
改造作業のお手本である。
他に標準のハーネスを取り去り、自作のハーネスを用いて使用しない回路を除去し、簡略化/軽量化を
図っている。


さらに室内では内装やマットだけでなく、エアコン、ラジオまで取り去り軽量化する思い切りの良さ。
ロールバーを装着しても実重量はノーマル車両より軽いという。
基本はスーパーターボだが、サイドシルのカバーやフェンダーのカバーなどが取り外され、前後のバンパーは
ノーマルのものに交換されており、外観はスタンダードのただのマーチにしか見えない。
サスペンションは車高調が装着され、マフラーも特製のものが装着されている。
ミッションはマーチRのものに交換されており、デフは機械式が装着されている。
インタークーラーの大型化による抵抗の減少などで、加給圧はスーパーチャージャー域で全開で1〜1.2
ターボ域で1くらいを示しているとのことである。
吸気系統の改造とともにレゾネーターも取り去っているので、スーパーチャージャーの吸気の音が凄い。
モーモーという音ではるか後ろからこの車が接近してくるのがわかるくらいの迫力である。
黒色で車高のやや低い京都ナンバーの普通のマーチを見かけたらこの車両かも知れないので、
あっさりと車線を譲った方が良い。


●バージョン2

なお、Nさんはその後兵庫県に転居したが、ボディー補強や配線のやり直しなど、いろいろと改造を加えたい事が
たくさんあり、さらなる改造を企ててバージョン2、つまり、峠仕様のマーチスーパーターボで、コンセプトは
ボディ強化と軽量化、そしてエンジンのパワーアップを目指して改造作業に入り、2年間掛けてボディの補強と
エンジンの改造を行った。
まず作業の工具、エンジンスタンド、エンジンクレーン、半自動溶接機等を購入し、その後2台所有していた
マーチの部品取り用のボディーをベースに使うことに決定し、2台とも全て外せる部品を外してホワイトボディー状態に
して、メインハーネスを配線図を見ながら 必要最低限のハーネスに作り変えた。


ボディ補強のためにボディの合わせ目や開口部、エンジンルーム等のスポット溶接を増やしてボディーを補強し、
ロールバーのボディとの溶接を行った。ロールバーのボディとの接合部はすべて溶接し、真中のロールバーは
基部をボックス構造にしてボディと溶接してある。
さらにフロントとセンターのピラーとロールバーの間にスペーサーを入れて溶接でボディとロールバーが
一体化されている。
単にロールバーを入れただけではボディの捩れを感じるがボディと溶接することによって非常にしっかりとした
ものになった。
ロールバーをピラーに溶接するためにフロントのウインドウの脱着作業もおこなっている。


エアー・クリーナーの位置がバージョン1と大きく異なっているのが判る。
オイル・クーラーも装着し、オイル・フィルターの位置も変更した。


次にエンジンをばらしてボーリングに出して、ボアアップしてマーチターボ(MA10ET)のオーバー
サイズのピストンを組み付けている。
ピストンの径はスーパーターボ(MA09ERT)の65.967から67.967へと2ミリ大きくなっている。
コンプレッションハイトは同じであるが、冠部凹容積が4.62ccから5.43ccと増えているので
圧縮比には大きな影響は無いと思われる。(計算上では7.7から7.85になる)
なお、ピストンピンの外径がターボは17ミリであるのでスーパーターボのコンロッドの小端部に合わせて
ピストンピンの穴を17.5ミリに拡大している。
排気量の変更のためにECUの燃調のマップを書き換えている。
ターボのブーストをコントロールするために電子式のブーストコントローラーを装着している。
バージョン2になってからエアーフローメーターとエアークリーナーがターボの吸入口に直接接続されて
吸入効率を高めている。
シャーシーダイナモでの測定ではローラー上でブースト1.3で147馬力、修正馬力155馬力。
最大トルクは4000回転で19.7kgmを発揮したという。
なお、車体はバージョン1と同様に内装はドアの内張りまで取り去り、配線も全て簡略化したものに
変更されており、車検取得時の実測で720キロだというが、乾燥状態ならもっと軽いに違いない。


早速試乗してみた。メタルクラッチが入っているのでクラッチの繋がりはやや急激であるが確実な感じである。
ショートストロークキットが込みこまれたギヤシフトは素早い変速が可能である。ミッションはマーチRの
ものに機械式のデフが組み込まれている。
低い回転数でも強いトルクが発揮され、グイグイと加速していく。
突然スーパーチャージャーがキュイーンという音をたてるので驚く。
普通のスーパターボのモーモーという低い音と違い、直接金属音のようなスーパーチャージャーの音が響く。
乗り難さは全く感じない。
まずブースト1に制限して走行してみた。アクセルを一杯踏む勇気は無かったがトルクステアで車が右側に
向こうとするのをステアリングの操作で抑え込む。
次にブーストを1.3にして走行してみた。すでにブースト1で過激な性能を知っているので、さらにアクセルを
踏み込むのは躊躇われるが、アクセルを全開した(つもり)。車が1車線ほど右側に跳んだ。前輪の空転と
トルクステアのために横に跳んだのを確認して過激なNさんのバージョン2の試乗を終えた。
外観はバージョン1と同様に普通のノーマルのマーチのような外観である。
ノーマルのマーチのような外観でありながらキャーンキュイーンというスーパーチャージャーの音を響かせて
走るのは凄い迫力である。


  (2005.7.23)

Nさんのマーチスーパーターボ用にシルクロードに特注で製作を依頼したサスペンションが出来たので、
早速試乗してみた。

かなり固いサスを覚悟して乗ったが、意外と乗り心地は良い。ダンピングが強く効いておりスプリングの
強さと比較するとダンパーが勝っているようなセッティングだ。今回は調整域の真中あたりで使用したが、
さらに硬くも柔らかくも調整可能だ。
まだ慣らしも終わっていないのでダンパーの当たりが出ていないのでやや硬さを感じるものの、しなやかな
足回りに仕上がっており、このままラリーに使用できるような完成度だ。
山道から高速のコーナーまで試してみたが、狭い山道でのコーナーリングでも追従性が良く、ステアリングも
一層シャープに感じる。
ロールも押さえられており、走りやすい。
高速での走行でも路面の凹凸に対してタッという音とともに綺麗に乗り越えていく。
強化されたボディと上手くマッチングしでおり、最近のラリー車に乗ったような印象だ。
前後ともストラットは全長調整式(フルタップ)で車高のセッティングとスプリングのプリロードの調整が
別々に可能である。
シルクロード製のションクアブソーバーのロッドやシリンダーなどには窒化処理がなされているので、
おそらく今回試乗したものも窒化処理されたものではないかと思われる。
今回は特注のワンオフの製作だったが、数がまとまればシルクロードでは、EK10スーパーターボ用として
製作してくれるとのことである。
前後の全長調整式ストラットにピローボールアッパーマウントとスプリングがついてサスペンションセットになる。
価格は未定だが、おそらく他の車種用(14.8〜15.8万)とほぼ同じような価格で提供してくれるのではないかと
期待している。
興味がある方は旧車王国まで連絡いただきたい。

  (2005.8.18)


●その後の状況と計画

純正のオーバーフェンダーやサイドスカートを取り外してあるので、フェンダーの端を綺麗に整え全塗装した。
結果的にタイヤをさらに外側にオフセットさせることが可能になり、コーナーリングパワーも上がっている。
今後の計画としては、インタークーラーが大きすぎるのでもっと小型のものに交換すること、配管の配置を
よりスムースに改良することと、配管がターボチャージャーの近くを通るので遮熱対策を考えることである。

  (2006.7.12)


●バージョン3

インタークーラーをターンフローのものに交換して、インタークーラーへの配管をよりスムースにした。
さらにバッテリーをドライバッテリーに変更して室内に移設した。
その結果エアークリーナーとエアフローメーターの位置も変更し、ストレートにターボチャージャーに吸気している。



軽量化対策についてはこれまでアンダーコートの剥離や内装の除去、リアのゲートをFRP製に変更。リアのウインドウは
アクリルに変更などをしてきたが、さらに軽量化を狙ってドアの内側にホールソーで穴を開けた。
ドア1枚あたり1キロの軽量化である。

冷却対策としてラジエーターのコア増しと、ジャケット水路の拡大をし、さらにサーモスタットを冷え型に交換した。

  (2009.7.6)


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