マーチ・スーパーターボ/マーチRのECUの種類と性能について


日産ではいわゆるECUをECCS(エンジン集中電子制御システムEngine Central Control System)ユニットと呼んでいる。
エンジンおよび補器をコントロールするコンピューターユニットである。
燃料供給量・点火タイミング・アイドル回転・過給機の制御・自己診断機能などをコントロールしている。
さらにレブリミット(回転数の制限)とスピードリミットもしているのが普通である。

マーチ・スーパーターボ/マーチRのECUとしてこれまでに下記の7種類のECU(ROM)で試走している。 本当はデータを解析して詳細に記載するべきであるが、とりあえず実際に装着して走行した感覚を記載してみたい。
また、このページをご覧の方でチューニングROMをお持ち方は試走してフィーリングを紹介したいと思うので、 是非ご連絡いただききたい。

1.マーチスーパーターボ純正 前期型
2.マーチスーパーターボ純正 後期型
3.マーチRラリー用ROM?
4.マーチR純正 後期型
5.マーチR純正 前期型 改
6.マーチスーパーターボ用マインズVX−ROM
7.マーチスーパーターボ純正 AT用

スーパーターボ純正 前期型および後期型
走行感覚では前期型および後期型に違いは感じない。

ラリーROM?
ラリーROMと聞いてROM単体で入手したが、マーチRでラリー参戦していた競技車両に使用されていたROMらしい。
試走した感じではマーチR純正(後述のECUなので後期型?)を全体的にやや上回る性能の感じで、 特に高速域での伸びが良いような気がした。
マーチRの標準のECU(後期型?)と比較してみると、2000回転くらいからパワーが盛り上がり、 3000から5000回転は非常においしくパワフルに変化しているような気がする。
高速域もマーチRの標準のECU(後期型?)より滑らかでパワフルに回転があがるような気がする。
また、リミッターは8000rpm弱の設定で、スピードカットは入っていないと思われる。ハイオク仕様。
初期のマーチRとは88/8〜89/8に生産された23710-21B00を意味し、後期とは89/9〜23710-21B20の ことを意味するのだと推定される。

マーチR純正 後期型
マーチRのECUはスーパーターボよりパワーが出ると言われており、実際に試してみると 全体的にスーパーターボよりトルクが上がっており、体感的に明らかにパワーが出ている。
2000回転からパワーが出てくる。最大のトルク感は4000回転を中心として3000回転から 5000回転の間が一番パワーがあるように感じる。
5000回転を超えるとややパワーが低下したように感じるがそれでも加速はしてゆく。
基本的にスーパーターボのエンジン特性を嵩上げしたような感じにパワーが増加している。
スーパーターボ/Rにはノックセンサーがついていないが、マーチR用のECUの 点火マップはスーパーターボよりやや高めてあるようで、レギュラーガソリンのままマーチRの ECUを装着するとノックしなかった車両もあったが、スーパーターボを3台試したうちの2台はノックを起こして ハイオクタンガソリンに入れ替えてノックがおさまった経緯がある。

マーチR純正 前期型 改(マーチR純正を改造したECU)
ROMの書き換え内容は、ターボチャージャーに切り替わる際のブーストが0.7ぐらいで 切り替わるように設定。また、アクセルを踏むとスーパーチャージャーがオンになり、 シフトチェンジの時にスーパーチャージャーが切れないようにするためにアクセルオフで スーパーチャージャーが切れないように設定。
全ブーストは1.1まで。レブリミッターはカット。それにあわせて燃料を調整してある。
このECUの改造をしたオーナーによると加速はマーチRのクロスミッションで、 スカイラインのタイプMと同等の加速だったとのことである。
アイドリング状態ではスーパーチャージャーは作動しないが、1000回転くらいから スーパーチャージャーの作動が開始される。低速でもトルクが大きくなっているのがわかるが、パワーはやはり 4000回転を中心に3000回転から5000回転にピークがくる。
パワーの感じはマインズ製をやや上回る感じで、ピーキーであり、コーナーを曲がっている途中で 突然パワーが上がり、コーナーから飛び出しそうになる。

スーパーターボ用マインズVX−ROM(マインズでチューニングしたECU)
規格は不明であるが、走行した感じでは基本的にスーパーターボのエンジン特性を嵩上げしたような感じに パワーが増加している。
感覚的にはマインズのスーパーターボ用VX−ROMの性能はマーチR純正のECUと性能がほぼ同じである。 マインズからはスーパーターボ用の他に、マーチR用にチューニングしたECUが市販されているが その性能には興味がある。

マーチスーパーターボ純正 AT用
マニュアルミッション用と同じフィーリングだが、気のせいだろうが何となく高速域でパワーが出ているような気がする。

  ECU型式 識別番号部品番号
ロット番号
ROMラベル
ROMの種類
基盤備考
マーチスーパーターボ純正 前期型  4623710 21B01
A11-000 T09
T104ADM7
M5M27C128K-I
A12-001 T0989/1〜89/8 23710-21B01
マーチスーパーターボ純正 後期型  4623710 21B05
A11-000 T12
T104ADM9
M5M27C128K-I
A12-001 T0989/8〜 23710-21B05
マーチR(ラリーROM?)                ROMのみ
マーチR純正 後期型  4423710 21B20
A11-000 T10
T104ADM8
HN27128AGJ-20
A12-001 T0989/9〜 23710-B20
マーチR純正 前期型  4423710 21B00
A11-000 T07
T104ADM6
またはT104ADM2
HN27128AGJ-20 
A12-001 T0888/8〜89/8 23710-21B00
マーチスーパーターボ用マインズVX−ROM  4623710 21B05
A11-000 T12
  封がしてあり内部は不明
マーチスーパーターボ純正AT  4523710 21B10
A11-000 T08
T104ADA4
M5M27C128K-I
A12-001 T09  

マーチR前期マーチR後期 スーパーターボ純正ATスーパーターボ純正前期 スーパーターボ純正後期

試走した結果のまとめ
所有しているECUを性能的に比較すると
マーチR改>>ラリーROM>マーチR純正後期=スーパーターボ用マインズVX−ROM>スーパーターボ純正
という結果になり、スーパーターボ純正の前期・後期の違いやマニュアルとATの違いは有意な差では無いと思われる。
スーパーターボではROMチューンは効果的な改造方法と思われ、しかもROMチューンで大幅に 性能が向上する余地を残していることがわかる。
手っ取り早いのはマーチRのECUに交換することだが、最近オークションなどではマーチRのECUの取り引き価格が異常に高くなっているのは残念である。

ECUの種類
上記の表に示すように、識別番号44がマーチR,45がスーパーターボのAT,46がスーパーターボのマニュアルシフトである。 基盤の違いはどこが変っているのかわからない。
ロット番号の最後の数字はT07からT12となっているが、スーパーターボとマーチRそれぞれに 大きく分けて前期と後期のECUが存在していることを示唆している。
プログラムのどこの部分に違いがあるか不明であるが、ROMのラベルに記載された下2桁の記号から推定すると、 マーチRの前期のロット番号の下2桁がT07でROMの下2桁がM6、マーチR後期がT10でM8 オートマの前期がT08でA4、未確認だがオートマの後期がT11でA5、スーパーターボのマニュアルの 前期がT09でM7、後期がT12でM9となっていると思われる。
しかしながらこれらの記号の違いはプログラムのどこの部分に違いがあり、性能にどのように違いをもたらしているのかは判らない。
なお、マーチRのROMをスーパーターボの基盤に装着してみたが、正常に動作したので、 ROMの部分の回路は基本的に同じであると思われる。
スーパーチャージャーのインジケーターランプが点灯するか、しないかで、マーチRのECUであるかどうかを識別するという話を聞いたことがあるが、改造してないECUならそのとおりだが、マーチRのROM、あるいはそれを基として改造したROMをスーパーターボの基盤に装着した場合にスーパーチャージャーのランプが点灯することを確認した。パイロットランプが点灯するかどうかはECUの基盤がマーチRのものかスーパーターボのものかで決まってくる。
ROMがマーチRのものでも基盤がスーパーターボであればパイロットランプは点灯するし、ROMがスーパーターボのものであってもマーチRの基盤に装着すればパイロットランプは点灯しない。

リミッター(マーチR)
マーチRでは車速が時速180キロ以上、または7040回転以上になったとき、 あるいは6400回転以上の状態が約5秒続いたときに燃料カットが行われ、 車速が174キロ以下、あるいは、6740回転以下になったときに復帰する。

ROM(Read Only Memory)について
コンピューター(ECU)はCPUとROMで構成されるが、 トヨタなどでは高度な集積回路で一体化されているらしい。
マーチの場合は生産台数が少なかったこともあり、不揮発性半導体メモリの一種である EPROMが使用された。
EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)は 内容を消去して、何度でも再書き込みができるタイプのROMである。
プログラムの内容を変更したり、バグを修正する場合には、ROMの内容を消去して 新しく書き込むだけで、システムを最新の状態にすることができる。
EPROMはその内部構造によって、UV-EPROMや EEPROM、フラッシュメモリなどに分類されるが、 ニッサンのECUでは紫外線UVを当ててデータを消去するタイプのEPROMであるUV-EPROMが 使用されている。
したがって基盤からEPROMチップを取り外して、紫外線を遮蔽するシールを剥がし、 ROMイレーサ(紫外線ランプの付いた装置)にセットして紫外線を照射すると、 内容を消去することができる。
そのあとで新しいプログラムをROMプログラマ(あるいはROMライター)と呼ばれる装置を使って 書き込めば良い。
現在チューニングしたマーチR/スーパーターボ用のECUはマインズなどから市販されているが、 知識と道具、そして熱意と時間があれば、現在装着されているROMのデータを読み出し、 書き直して同じROMに焼きこむことが可能である。

ROMチューンについて
旧車王国でマーチR/スーパーターボのROM内容についてさらなる検討を加い、できればチューニングしたROMを 適当な価格で提供したいと考えているが、手間のかかる作業なので未だ着手できないままである。
自分でROMチューンをやってみようという方は下記のインターネットのみんカラのページ『エレ・スカージュ(Ailee・Scage)』〜MA09ERTエンジンのROMチューニングに10回に分けて記載してあるブログを参考にすると良い。
http://minkara.carview.co.jp/userid/493838/
ROMチューンに関して非常に詳しく説明してあり、特にマーチR/スーパーターボに関しての記述は非常に参考になるページである。

ECUの取り外しかた
助手席の前のダッシュボードの物入れの中を空にする。
ダッシュボードの下で非常信号灯のついているカバーを留めているプラスネジを2個はずす。


左側はダッシュボードの下の棚と共締めである。
カバーを外すとECU本体の下部のパーツナンバーのラベルが見える。
下側からECUに行く配線コネクターが挿入されている。全体が1個にみえるが、実際は4個の コネクターに分かれている。
それぞれのコネクターの真中を押して、ストッパーを解除しながら 引き抜く。
抜けにくいときはコネクターのストッパーを押しながら、マイナス・ドライバーで 軽くこじる。


次にECUの左下を固定している10ミリのボルトをスパナで外す。
長めの大型のプラスドライバーまたはソケット・レンチでダッシュボードの物入れの中の2本の ボルト(10ミリ)を外す。


ECUは物入れの真中の穴にフックで引っかかっているので、それを外して下の方にECUを 引っ張り出す。


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