DME(Digital Motor Electronics)とはボッシュのエンジンマネージメントシステムのことで普通の車で言うところのECUであるがDMEリレーはDMEユニットと燃料ポンプのスイッチになっている。壊れるとガソリンが供給されず、燃料が噴射されないので「セルモーターは元気良く回るのにエンジンがかからない」という状態になる。
それぞれの画像の左側がドイツ製で右側がハンガリー製だが、どちらも同じ基盤でトラブルを生ずる。
リレーケースの内部で大きく振動する原因を調べてみたら、リレー基盤がケースの中で前後に揺れる余裕がある。つまり基盤がフロート状態になっている。
リレー本体をケースから抜き取って90度回して突起に合わせて挿入するだけで振動を抑制でき、トラブルを少なくすることが出来るだろう。ケースの外側から見て6本の脚(ピン)が2列に見える状態であるが、分解して突起に合わせてケースに入れなおして6本のピンが3列に並ぶようにすると良い。
ケースに入れなおして左の状態を右の状態にする。
左が加工前、右が強化後
万一DMEリレーのトラブルで、エンジン始動困難になったら、リレーを分解し、ソレノイドの間に紙片を挟み、無理やり接点が閉じた状態にしてエンジンを始動する。
同様のトラブルはフォルクスワーゲンやアウディなどでも多発しており、プリント基盤の上にソレノイドが搭載されたタイプのリレーに共通する構造的な問題だと思われる。
911用のDMEリレーの部品番号は911 618 154 00
ポルシェの911や964のDMEリレーのトラブルでエンジンが始動しないという問題がしばしば報告されており、DMEリレーは別名ダメリレー(DAMEリレー)などとか言われ、お守り代わりに予備をグローブドボックスに入れておくとよいといわれている。
左は911(89年までのカレラ3.2)のDMEリレー、右は964, 993用のDMEリレー(背の高いのが改良型の993 615 227 00、背の低いのが旧型の944.615.227.00)。
何が問題かというと、接点が焼けたり、ソレノイドが断線するのではなく、基盤のハンダ付けの部分に細かいクラック(ヒビ割れ)が入り導通不良を起こしてエンジン始動不能や息つき、ハンチングなどを起こすということになる。
特にポルシェのDMEリレーは内部に2個のソレノイドを持ったリレーであり、ソレノイドの作動で基盤が激しく振動し、何度もそのような振動が加えられて基盤のハンダ付けの部分にクラックが入るものと思われる。
トラブルは多くの場合は始動時に起きる。つまりイグニッションスイッチを入れた瞬間にリレーが作動し、リレーが作動した瞬間にその振動でクラックが入るからである。
セルモーターは元気良く回るが全くエンジンが掛かる気配が無い、というのがDMEリレーのトラブルのときの典型的な症状である。
燃料ポンプのトラブルと全く同じ症状になる。
運よくエンジンがかかっても突然止まるとか、息つきをするという症状の場合もある。
911用のDMEリレーを振ってみると内部である程度の重さのものが揺れているのを感じる。
ケースの端の両側にマイナスドライバーを2本差し込めば、リレー本体の端子を持ってケースから引き抜くことができる。
ケースの内部にはプリント基盤に載ったリレーが2個内蔵されている。イグニッションオンで下のリレーがオン、この状態で燃料ポンプが作動する。スターターを回すと上のリレーがオン、この状態でDMEに電源が供給される。当然ながらエンジンが回っている間は保持された状態が続く。
ケースの内側をよく観察すると基盤の厚さを支えるレールのようになった部分(突起)があるが、最初の状態では不思議なことにその突起に沿って挿入されずに90度違う方向に挿入されている。そのために手で振っただけで基盤が揺れて振動を感じる。
964用のDMEリレーのケースの内側は見たことが無いが、恐らく同様の構造になっていると思われる。
予防的にハンダ付け部分をハンダ盛りしておくのも良いと思うが、構造的に2階建てのリレーになっていて作動時の強い振動が避けられないので細い電線を追加してハンダ付けで加えておくのが最も完全な方法である。
基盤のクラックが生じないように予防的に電線をハンダ付けして強化してみた。
電線は何でも良いが、銀メッキ線でプリント基盤が割れても大丈夫なようにハンダ付けし、ハンダをやや盛り気味にした。
964, 993用のDMEリレーの部品番号は旧型のDMEリレーは944.615.227.00であり、改良型のDMEリレーは993 615 227 00である。
改良型の方が全長が長い(背が高い)。
改良型なら安心だと思われているが、改良品も走行距離と時間によって劣化して同様のクラックを生ずるので、定期的に交換するか、予備を持っていないといけない。
BMWのDMEリレーも964,993に転用できると聞いたことがあるが確認してはいない。
89年までの911用DMEリレー911 618 154 00 911は脚が丸いピンになっており、964, 993用のDMEリレーは平型のピンなので互換性は無い。
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